Sketch・InVision・Figma・Adobe…2018年に起きたデザインツールの変化とこれからの未来予測

更新日:2018年12月2日

気がつけば12月1日…アドベントカレンダー初日でした。自分が立案者であるのにも関わらずすっかり今日のことを忘れており、必死でこの記事を書いています。と、いうことで『Design Tools Advent Calendar 2018』、スタートです!

今年も相変わらず各社積極的なアップデートを展開

数年に渡って繰り広げられているいわゆる「デザインツール戦争」。Photoshop・IllustratorのAdobe一択だった時代から、Sketchや多数のプロトタイピングツールの登場、そしてここ1〜2年は統合型のデザインツールが界隈を賑わせています。(ここ数年のデザインツールの経緯は以前にこちらにまとめましたのでぜひ御覧ください)

Webデザインツールのこれまでとこれから(Fireworks〜現在に至るまでを振り返る)

この1年でも数々の新規デザインツールが発表されたり、各社も新機能を続々とリリースしていました。本記事では、人気のデザインツールをいくつかピックアップし、気になったアップデート内容を紹介してまいります。

「Photoshop」✕「iPad」の衝撃

今年、個人的にデザインツールにおける一番の衝撃的発表だったのは、Adobe Maxで発表されたiPad版Photoshopでした。以前よりAdobeからはモバイルに最適化されたPhotoshopの機能を切り出したアプリが提供されていましたが、このたび発表されたのは完全版Photoshop。

これまでもおそらくAdobeはiPadでのPhotoshop提供を考えていたと思われますが、スペックの問題やOSの仕様上(ファイル管理など)難しい面があったのではないでしょうか?それがここ2年ほどでスペックが追いついたこと、iOSの仕様が大きく変わったことにより、Adobeが実現したいことに環境が追いついてきました。

AdobeはPhotoshop以外にもPremiere Rushというモバイルでも利用可能な動画編集アプリをリリースしており、これも個人向けと言うよりはプロ向けのツールとして展開しています。今回のiPad版Photoshopの発表は、「プロ向けツールをいつでもどこでも使えるようにする」という大きなメッセージなのではないかと僕は受け止めました。

Photoshopがやっているなら、当然IllustratorのiPad版開発にも取り組んでいるでしょうし、Adobe XDなどもそうでしょう。来年以降、「iPadでデザインする」が少しずつスタンダードになっていくかもしれません。

Adobe XDは無料化をスタート。プラグイン対応・音声プロトタイプなどのアップデートも

Adobeがこの1年ほど、めちゃくちゃ推しに推しているのがやはりAdobe XDでしょう。マーケティングにも非常に力を入れている様子が垣間見えます。Adobe製品は基本的に1ヶ月の無料利用ののちに月額の支払いが必要になるというのがこれまででしたが、XDについては特別に1プロジェクトは永久的に無料で作ることができるという施策が今年の5月からはじまりました。これは明らかに完全無料で使えるInVision Studioを意識したものではないかと感じさせられます。

Adobe Maxではプラグイン対応と音声プロトタイプについての発表がありました。もともとXDは他社ツールとの連携は控えていくように見えていましたが、今年は一気に方針を転換して、他ツールとの連携が出来るようにAPIを公開し、JavaScriptで簡単にプラグインを作ることができるようになりました。API連携が、これまでXDにあまり注目していなかったエンジニアたちの目に止まると、デザイナー以外の新しいユーザー層の開拓ができるかもしれません。また、引き続き注目分野であるVUIに対応しているプロトタイピングツールは現状だとXDのみ。

デザイナーでAdobe CCを入れていない人はほとんどいないかと思いますので、引き続きXDのユーザーは増えていきそうです。機能も初心者向けに非常に優しく出来ています。しかし使い方が簡単ゆえの落とし穴も多く、リピートグリッドやアセットについては使い方を誤ると実装不可能なデザインが次々に生まれてしまいそうです。さらに、XDをパワポやエクセル方眼紙の代わりに使っているような事例もたびたび見かけます。マーケティング的には「安い」「簡単」「何でも出来る」みたいな打ち出し方をすると多くのユーザーを取り込むことができますが、しっかりとデザインについて思考することができるツールとして成長してほしいなーと個人的には思っています。

Sketch、今年は大幅にUIを刷新。ヘッダー・フッター固定対応、ダークモード、データ連携などのアップデートも

2010年にリリースされたSketchも来年で9歳。今年はバージョン50〜52がリリースされました。少人数での開発・提供をしているのにも関わらず、定期的にアップデートが続いており、本当に素晴らしいプロダクトだと思います。

年に1度は必ず大きなアップデートを行っており(これはある意味マネタイズの源泉でもある)、今年はバージョン52がそれでした。52ではUIをすべて刷新。レイアウトやアイコンの変更、さらにインスペクタパネルも大きく改修されました。


大幅に変わったツールバー。アイコンも刷新し、ボタン風に見えるように角丸の囲いもできた。


RESIZEはアニメーションでわかりやすくなった。

またMacOS Mojaveに対応するため、ダークモードも実装。Photoshop・Illustratorでダークモードがお好みの方にはおすすめの機能です。

アップデートのたびにパフォーマンスの向上がうたわれていますが、個人的にはまだまだ動作が重いなという印象。特にアートボードを大きくするとどうしてもガタついてしまいますね…。最近、大きめのアートボードで作業をしなければならず、画面が何度も固まってしまうのに結構ストレスを感じています。なんとか頑張ってほしいものです。

そして来年はぜひ、iPad版Sketchの開発にチャレンジしてほしい…!

静かだったInVision。InVision Studioが正式リリース。

昨年、派手にInVision Studioについて発表したInVisionでしたが…今年はとても静かでしたね。一応Studioは先行ユーザー向けにリリースされ、11月にはひっそりと正式バージョンがリリースされていました。しかし…なんとも静か。あんなに事前プロモーションが派手だったわりに、正式リリースはあまりに静かでした。なぜ…?

はっきりいってStudioの機能についてはSketchにはまだまだ及ばず、また予告されていたStudio Platformはリリースされていません。またWindows版もでるとのことでしたが、そちらもリリースされず。目玉だった内容はほとんどリリースされていないのです。その他にもInVision DSM(Design System Manager)もパッとせず、InVision本体の高速化プロジェクト「V7」についてもリリースされず…。あまり開発の進捗が良くないような印象です。

今年日本で話題になったことといえば700人いる社員がオフィスなしで全員リモートで働いているということ。Sketchも確かほぼリモートだったと思うのですが、700人もいないんですよね、たぶんせいぜい30人ぐらい?さすがに700人もいて統率が取れていないんじゃないかという気がしてしまいます。

ガッツリと資金調達して、なんとかExitしなければならないはずのInVisionですが、来年はどうなることやら?

プラットフォーム化を宣言したFigma。じわじわとひろがる人気のデザインツール

ここ1年、Figmaに乗り換えたという話はよく耳に入ってきました。リアルタイムの共同作業ができるのがやはりいいんでしょうかね?実は僕はあまり実務で使ったことがなく、正直あまり多くは語れません。

今年の3月に『Figma’s Platform』という構想が発表され、多くのプロダクトとAPI連携、そしてオープンなAPIが提供されるようになりました。しかしこのAPI機能、ちゃんと活用されているんですかね?いろいろと乗り換えについて書かれたブログを読んでいるのですが、いまいちAPIの話は出てきませんね。

やはり編集はSketch、共有はInVision、開発のやり取りはZeplin、バージョン管理はAbstract…みたいなバラバラな状況から1本にまとめられてリアルタイムに共有できるのがいいんですかね?改めて調べてみると機能もだいぶ充実してきているようなので、来年何かのプロジェクトで試してみようかと思います。

ついに本命? Frame Xがリリース

これまでコードベースでデザインする形だったFramerシリーズ。今年はFramer→Framer Studioと形を変えて、ついにFramer Xとして生まれ変ってリリースされました。

以前から細かいインタラクションをつけられるものの、コードベースでなかなかとっつきづらかった印象でしたが、Framer XになってからはGUIを中心としたツールへと進化しました。以前はGUIとコードを切り替えて作業する感じでしたが、現在はデザインと外部エディタによって作業を行うようになりました。そしてReact・TypeScriptを用いたコーディングスタイルになったようです。Unityっぽくなった感じのようですね。コンポーネント機能も便利そうです。

現状のデザインツールの中ではかなり作り込める感じのツールなのかもしれません。しかし使いこなすにはそれなりに勉強が必要そうな感じ。使う人と現場をかなり選びそうなツールです。

2019年、デザインツールはどうなる?

さて、ここまで今年の様々なツールのアップデートを紹介してきましたが、来年どうなるかという予測を。

  • XD・Sketch・InVision Studioにリアルタイム共有機能が付く
  • Adobe以外の会社からiPad版Sketch的なツールが出る
  • iPad版XDが出る
  • 「手書きのメモがそのままデザインになる」が実験版ではなく製品版として出る

予測って言うより願望になってしまいましたね。

Design Tools Advent Calendarを引き続きお楽しみに!

さて、アドベントカレンダーは残り24日分ございます。すでにテーマが登録されていますが、新しいツールの紹介からあえて手書きに戻してみた…などバラエティ豊かな内容となっています。12/25のクリスマスまで、引き続きお楽しみください!

書き手:小島 芳樹
Webやスマートフォンアプリによるサービスを開発・提供する会社で働いています。
Twitter: @yoshikikoji

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