まとめ

本当にユーザーが幸せになるサービスを作るには?一連のキュレーションメディア騒動で改めて考えさせられたこと

2016-12-10

DeNA社のWELQを始めとして、数社のキュレーションメディアの運営に問題があり、次々とサービスが一時中断する事態になっているのは既知の通りですが、これはWebサービスを展開する業界全体の問題として捉えなければならないのではないかと私は思っています。

これまでにいくつかの会社での仕事を通じて感じてきた違和感が、今回の事件には詰まっていたような気がして、そんなもやもやした気持ちを整理してみました。

KPIってなんのためにあるのだろう?

Webサービスを運用する中で必ずといっていいほど出てくる言葉、それが「KPI」です。日本語では重要業績評価指数。サービスのグロースに寄与する一番の指標を定め、組織の目標値とするのがこのKPIです。

例えば具体的には
・DAU(1日の利用者数)
・SEO流入による訪問者数
・継続率
・課金率
・ARPU(ユーザー1人あたりの平均売上高)
・コンバージョン数/率
などなどがあげられます。

例えばソーシャルゲームの売上を分解すると
売上 = ユーザー数 ✕ 継続率 ✕ 課金率 ✕ 課金単価
という感じになります。
これはとてもわかりやすい指標で、継続率が悪いと売上が下がってしまうから、改善できるようにチュートリアルを改修しようとか飽きないためのイベント施策を打とうとか、そういう会話ができるようになります。

ただ上記であげたものだけでは、ユーザーのニーズにマッチしていたのか、満足してサービスを使ってくれたのかはわかりません。
ソーシャルゲームの中にはユーザーをイライラさせて、そのイライラを解消するために課金をさせるという仕組みをとっているものも多いですので、決してユーザーが幸せを感じてそこにお金を使っているとは限らないと私は思っています。
課金率が上がった、課金単価が上がった、しかしそのサービスの未来は果たして本当に明るいのか?KPIの設定を間違えるとそのサービスは間違った方向に向かい、直近の目標は達成できても、長く愛されるサービスにはなれない可能性があります。

さて、キュレーションメディアのKPIを想像してみましょう。
キュレーションメディアに関わる人々はざっくりこんな感じで
提供元 広告主 ユーザー
この3者がそれぞれに何かメリットを提供することで事業として成立します。
提供元は広告主からお金をもらいます。
広告主は質の良いユーザーがたくさんいる提供元にお金を払います。
提供元は質の良いユーザーをたくさん集めれば、たくさん儲かります。
提供元が事業を成功するためには、とにかくたくさんユーザーを集めることが必要だったわけです。しかもそれを低コストで実現できることができれば、事業としての成功角度はより増していくはずです。
たくさんのユーザーを集める:DAU(1日の利用者数)
低コストで実現する:SEO流入による訪問者数
このあたりがキュレーションメディアのKPIになっていたのではないでしょうか?
そしてこのKPIは「ユーザーの幸せ」に寄与することはできたのでしょうか?

ユーザーの幸せを測る指標はあるのか?

私は最近、KPIは人の幸せには寄与しないんだと結構割り切った気持ちでいました。儲かっているサービスは何かしらの形で人の幸せに寄与しているだろうし、KPIは経済的合理性だけを求めた指標であれば良いんじゃないかと思っていました。

その反面、ユーザーが喜んでくれた結果を表すわかりやすい指標をきちんと設定することができれば、どんなに組織がスケールしても、「ユーザーの幸せ」を意識した組織になっていけるのではないかと思っています。

顧客ロイヤリティを意識しないと日本のWeb業界は成長しない

顧客満足度とか、ユーザーエクスペリエンスとか、ユーザーファーストとか。ユーザーを意識しましょうというバズワードがさんざん叫ばれてきましたが、未だに日本を代表するWebサービスの会社が「ユーザーの幸せ」を忘れてしまうことがあるわけで。なんかもうこのままじゃホントヤバイと思ったんですよね。

じゃあどうしたら「ユーザーの幸せ」を意識した組織をつくることができるのか。そんなふうにもんもんと考えていた中で出会ったのがこの本でした。

ネット・プロモーター経営 〈顧客ロイヤルティ指標 NPS〉 で「利益ある成長」を実現する
この本はベイン・アンド・カンパニーというコンサルティング会社のフレッド・ラルクヘルド氏が提案した「ネットプロモータースコア」という顧客ロイヤリティを測るための指標を、実際に企業に導入してどのようなことが実現できたのか書かれた本です。

まさに売上第一主義でやっていた会社が壁にぶつかり、顧客ロイヤリティを意識した方針に転換して見事に成功した事例が載っていました。ITではアップル・ザッポス・グーグル・フェイスブック、その他の業種ではアメリカン・エキスプレスやフィリップスなど、名だたる有名企業が経営指標として採用しています。

NPS(ネットプロモータースコア)の解説についてはこちらが詳しいです。
NPSは役に立たない? よくある5つの批判をUXリサーチ専門家が検証してみた

このNPSという指標は「ユーザーの幸せ」に結びつく、わかりやすくてとても重要な指標になるのではないかと思いました。今までいろいろなサービスに携わって来ましたが、この指標がWebサービスのグロースに活かされているところ見たことがありません(私の経験不足かもしれませんが)。元々はマーケティングの分野から生まれたものですが、デザイン・エンジニアリングまで落とし込んでもっともっと使っていけそうな気がしています。


日本のWeb業界はインターネットの普及から20年近くが経っていますが、他の業界に比べるとまだまだ未成熟で、襟を正さなければいけないことがまだまだあるのではないかと思います。今回の事件もそうですが、ユーザーに寄り添ったサービスづくりを多くの会社が実現するのには時間が掛かりそうです。

本当にユーザーが幸せになるサービスを作るために
・ユーザーが幸せかを測るわかりやすい指標を決める
・決めた指標を組織全体に浸透させる
これをやらなければ日本のWeb業界に未来はないんじゃないかと思っています。

どうすればこの指標が決められるのか、広めることができるのか、そしてデザインやエンジニアリングを通じてプロダクトに落とし込むことができるのか。来年はこんなことをテクニカルクリエイター.comでも書いていきたいなと思っています。

書き手:小島 芳樹
Webやスマートフォンアプリによるサービスを開発・提供する会社で働いています。
Twitter: @yoshikikoji